長谷観音前の交差点にある和菓子屋さん。
今回、初めて入りましたが、大きな見落としでした。
近年の鎌倉には、魅力的な飲食店が呆れるほど 、もうたくさんだろってくらい出来ており、なんだか,訪れる前から疲れちゃうような気分です。
主要な通りにも溢れんばかりの観光客の姿で、 もはやデブが歩く隙間なぞはありませんが、以前はよく、鎌倉⇔長谷あたりを散策しておりました。
しかし、長谷寺の入り口にあるこちらのお店はノーマークだったのよ。だって、大仏観音煎餅だぜ! いかにもな、観光菓子店だと思っていたのです。
これが、大きな間違い。
なんと宝暦年間創業、実に250年からの歴史ある老舗だったのです。外観とは違って、店内は深い味わいのある雰囲気。手頃値のお菓子はどれも旨そうなのよ。
バカにしておりましたが、看板は県指定銘菓にもなっている大佛観音煎餅です。
この日、背負って帰ったら、不吉にも大仏様の首がパッキリ落ちておりましたが、高徳院の大仏様と長谷寺の観音様が2枚1組になっており、重ねると大仏に光背がついてるような体裁になるのが面白いところ。こりゃ良きお土産になりそうよ。
何よりの特徴は硬いことです。大垣の方にも硬ぇ煎餅のお店が知れれていますが、こちらのもなかなか。バッキンとして、中年の歯茎を試される硬度なので、びっくりしたわ。詳しい製法は分かりませんが、 2重にして焼いているのか、とにかく厚くて硬ぇ。しかし、その食感がクセになるような感覚があるのよ。お味も風味も上々ですし。
瓦せんべいも扱う関係なのか、他のお菓子も焼き物が特に気になるルックスでした。どら焼きとワッフルと、ほうじ茶のロールケーキ。
焼き皮の生地だって、今風にふんわり軽くは無ぇ! これまたみっちりとして、甘食を食ってるようなレトロ感があるから、面白いな。
んで、一番、スゲェと思ったのが、この黒餡女夫まんじゅうです。
そういえば、江ノ島や小町にも ”女夫饅頭” ってのが売ってるよね。私は全然買ったことがなかったんだけど、考えてみれば、他では見たことがない独特な字面です。
ちなみに「松風堂」のは義経と静御前由来の女夫石にちなんだもので、「 井上総本舗 」は白龍と弁天を表すとのこと。検索すると奈良の長谷寺あたりにも、2色の饅頭を重ねた女夫まんじゅうが伝わってるようで、ちょっとした歴史ミステリーを漂わせます。
こちらの女夫まんじゅうは白一色なので、どこがどう女夫なのかはわかりません。
食べてみるとね、実に古式ゆかしきお味なのよ。皮はほんわり甘酒のようないい香りがして、虎屋饅頭みたい。これに黒糖餡の素朴さがあいまって、まさに食べる歴史って感じのおいしいお菓子です。
明治大正で広がった瓦せんべいよか、よほど伝統を感じるもの。本来はこれが揺るがぬ一押しなんじゃないかと思うのです。ただ、持って帰る頃にはどうしても固くなってしまうから、蒸し直しの手間を嫌って、現代人には好まれないのかなぁ。
鎌倉の味として、一度は食べておきたいお饅頭だと思います。やっぱし、鎌倉は侮れない地だな。
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