近年、観光客がさらに増加してウッハウハな横浜です。
昨年だけで、なんと3631万人もの人々が、遊びに来てくれているんだってさ!
いやいや、お前ら、何しに来てんのよ?
バイクに乗った舘ひろしなんか、もういないんだよ!
まぁ、港のオサレなイメージだけは、やたらと突っ走っておりますし、横浜中華街も実に楽しい場所ではあります。
でもね、実態は千葉あたりとなんら変わらねぇ、ただ東京にへばりついているだけのシケた街なのですよ。もし、背伸びした横浜民が何かイキったことをしでかしたら、耳元で「苫屋の煙」とチラリホラリ囁いて、その出自を思い出させてやってくださいね。
食べものに関しても、特別珍しいものはありません。東京に全部あっからね。
でも、はるばるやって来たのだから、なにか横浜らしいご当地グルメを食べて帰りたいよとおっしゃる方も多いでしょう。
そこで今回、横浜庶民グルメサイトを運営して10余年、鳴かず飛ばずな恰幅の良い彼セレクトによる【横浜五大麺】をご紹介しようと思います!!
開港の地として西洋文化の入り口になり、戦後はアメリカ進駐の拠点ともなった横浜です。
しかし、意外や意外、西洋風の食文化はあんまり根付いてないのよね。
きっと震災や戦争を経て、その殆どが首都に流れてしまったのでしょう。
んでもって、残ったのは、田舎から働きに出て来た労働者たちの文化。
だから、強いて食の特徴を挙げるならば、やはり中華街を発とした大衆中華への影響ではないかと思うのです。
横浜らしい麺料理、興味を持っていただけるでしょうか?
ありきたりの観光に飽きた皆様の一助となれば幸いです。
横浜家系ラーメン
これは文句無しにオススメなご当地メニュー!
横浜青少年の汗はこの家系ラーメンの匂いがするとも言われていますね。
「吉村家」を元祖とするこってりラーメンの総称で、屋号に”家”がつくお店が多いため”家系”と呼ばれています。
スープは俗に”豚骨醤油”と表現されますが、実際は鶏もかなり使っているのでホントは鶏豚骨醤油が正しいのかもしれません。麺はモッチリ短めの太麺。具は焼豚にほうれん草と海苔が乗ります。のりがのります。クドいか!?油多めか?
また、麺の硬さ、味のこさ、油の量がそれぞれ指定可能なので、食券を渡すタイミングでお好みをオーダーしましょう。
近年はセントラルキッチンの普及もあって、家系を扱う店舗が全国に広がっているようですね。博多の豚骨、札幌の味噌等と同様、いずれ国民的ラーメンになりそうな予感がしませんか?するよねっ!
皆さんもこの旨さと背徳感のせめぎあいをぜひぜひご体験いただき、ご近所のお店と比べてみてください。
なお、観光中心部にはチェーン店以外の出店が少ないので、今回のオススメは少し離れた場所のご案内です。
吉村家(横浜駅)
やはり一番人気で、常に長い行列が絶えません。
元祖でありながら完成されたスタイルに安住せず、模索を続け、お味はむしろエッジの端を行くような印象です。ぶっちゃけると、かなりしょっぱく、スモーキーなってたりするので、好き好きかもしれません。
ただ、総本山を拝む観光価値はかなり高いと思います。
寿々喜家 曙町店(伊勢佐木長者町駅)
むしろ王道と感じるのはこちらのお店。
なにか尖った部分があるわけではありませんが、すべてが高い水準で丁寧に調理され、家系らしいお味を堪能できます。
せんだい 曙町店(阪東橋駅)
個人的なイチオシはこちら!
近年、ラーメン偏差値が上がっている曙町に移転しました。こってりまろやかでクリーミーなスープは第一級のお味だと思います。チャーシュー丼もお得!
サンマーメン
「サンマは乗ってません!」という説明が、もはやベタベタになる程度にはメディア露出をしており、すでにご存知の方も多いと思います。
あっさりな醤油ラーメンの上にシャキッと炒めた野菜餡をかけた一杯。
一般的なもやしそばや五目そばと何が違うのかというと、きくらげや人参等、もやし以外の野菜が入っている点と肉などのタンパク質が入っていない点です。
名前の由来や発祥は明確ではありませんが、お店の歴史が古いからということでメディアでは中華街「聘珍樓」を取り上げるケースが多いようですね。まぁ、こちらは高級店なので、間違ってもサンマーメンなんかを注文しない方がいいと思います。
おそらく、ローカルにとどまった理由は、ビンボー臭ぇからじゃねーのかな?!
比較的安価で温まるし、ベースのラーメンがイマイチでも餡の力でごまかすことができるため、横浜下層の庶民生活に密着した真のご当地メニューとも言えましょう。
市内では多くの中華屋さんが扱っていますが、昔からのお店でいただくのがオススメです。
大来(桜木町駅)
飲ん兵衛の街の野毛にある中華屋さん。
しこたま飲んだ後には、いささかボリューム満点すぎるのですが、
看板メニューのサンマーメンはとてもおいしいので、ぜひ立ち寄りたいお店です。
萬福(日ノ出町駅)
馬券を外しまくるお父さんたちがまったり過ごす大衆店です。
お店にもアジがありますが、お料理もよろしいのです。
単なるノスタルジーに終わらない、古き良き中華のお味。
玉泉亭(伊勢佐木長者町駅)
サンマーメンの元祖をうたうお店の一つです。
良くも悪くも「こんなもんだよ、サンマーメン」を体現したお店。
なお、横浜駅にも支店がありますよ。
タンメン
「オマエに食わせるタンメンは無ぇ!」というギャグが「タンメンて、なんなの?」と全国に通じなかったエピソードに衝撃を受けた横浜市民です。
タンメンは漢字で書くと”湯麺”になるのでしょうか?
これはざっくり”汁そば”って意味なんだよね。
それがどういう経緯で、現在の野菜たっぷりタンメンに至ったのか?
地元でも語られているのを見たことがないため、サンマーメン以上に謎深きメニューと言えましょう。
タンメンは塩ラーメンへ野菜の具を乗せたものではありません。軽く炒めた野菜にスープを注いでひと煮立ちさせるため、野菜の旨味がスープに溶け出す寸法です。
なお、このメニューは横浜ローカル限定というわけでもなく、港湾部を中心に文化圏は北へも伸びている印象です。東京のタンメンも近年掘り起こされていますが、あちらは生姜をポイントにしている点がちょっと違いますね。個人的に横浜らしいタンメンだなと思えるポイントは、太い平麺を使い、にんにくを利かせたゲテな味わいです。
タンメンも一般的な中華店で扱いますが、タンメン&ギョーザを主力にするタイプのお店も存在しますよ。
大来(桜木町駅)
再び登場の飲酒賭博街を支える中華屋さん。
タンメンも、いや、タンメンこそ、パワフルでサイコーです!
三幸苑(桜木町駅)
横浜でタンメンといえば、このお店です。
グダグダでグズグズでゲテゲテという、らしさの底をも突き破ったようなタンメンでした。
近頃、リニューアルを果たし、だいぶマトモになりましたが、あのアジが薄まってしまったのは好かれ悪かれかも。
チャーメン
いわゆる、やきそばなのです
が
皆さんの地元の中華屋さんで、やきそばを頼むと、どのようなものが出てきますか?
多くは揚げ麺や焼き麺に五目餡をかけたもの、もしくはソース焼きそばになるのではないでしょうか?
当横浜では野菜とともに麺を炒めるタイプの炒麺が、市民権を得ております。
これも、ご当地限定というよりは東京まで含めた文化であると思われますが、中華街に近い横浜の方がより濃厚に存在するように思えますね。
醤油味もありますが、基本は塩+化学調味料ベース。
タンメンの平打ち麺を使って、比較的柔めに仕上げたものが、特に横浜下町っぽいなと感じます。ちなみにタンメンが旨いお店は、チャーメンも旨いというのが一つのお約束になっています。
これをつまみに酒が飲めますよ!
三幸苑(桜木町駅)
やはりグダグダでグズグズでゲテゲテ。
胡椒とにんにくやケミカルの炸裂した闇深き味わいは、妙な中毒性がありました。
これもリニューアルでだいぶマトモになっています。
萬里(桜木町駅)
野毛を代表する大衆中華店。
名物の餃子など、また別の機会に紹介させていただきますが、このお店の”柔らかい焼きそば”は支持の高い一品です。
私もめっちゃ好きなんだよ!
龍味(横浜駅)
地下街の外れに立地する小さなお店ですが、常に満員。
おいしい大衆中華の麺飯を安価にいただける貴重なお店です。
炒めものは特に、活きたお店でいただくの重要です。
バンメン
最後は横浜市民でも知る人は少ないという幻のローカル麺。
品書きの片隅に埋もれたまま消えゆく運命。絶滅危惧種のバンメンです。
今のところ明確な定義も存在しませんが、あんかけ多めでスープの少ない五目そばといったところでしょうかね。
バンメンというのは、おそらく”拌麺”のことであり、いわゆる和えそばであると推察します。
しかし、古の中華出前事情に由来するのでしょうか?
麺がくっつかないよう、若干のスープを加え、保温のために餡をかけたような経緯が推察されます。
しかし、カタカナのバンメンに弁髪の辯で辯麺や三鮮辯麺の文字を当てている老舗が確認される点がクセ者で、これって満州的なアレなの? やっぱ、よくわからねぇの!
お料理としての立ち位置も実にビミョーなんだよね。
バンメンがバンメンあるがゆえの魅力が何も見つからねぇもん!
そんなこんなで今では一部の歴史中華店に痕跡を残す程度の存在になりました。
これは上級者向けの横浜ご当地麺といえます。
知ってると、その筋から一目置かれますよ。まぁ、その筋がどの筋だか分からねぇけどさ!
奇珍楼(石川町駅)
観光中華街では失われてしまったような古式ゆかしき中華を出すお店です。
味付けは総じて甘いのですが、餡ものは特になので、好悪は別れますね。
ただ、横浜の中華料理店を語る上で無視できない存在です。
清風楼(元町中華街駅)
シュウマイを名物とする中華街の老舗。
古き悪き中華街接客を未だ伝えるお店なので、寄り付きづらくはあります。
ただ、最も原型に近いバンメンを食べられるお店なのかも。
玉泉亭(伊勢佐木長者町)
本店では最近、サンマーメンの他にバンメンを推すようになっています。
バンメンとは一体何なのか、謎を深める一杯なのですが、論戦に参加する資格のあるお店だと思います。
ただ”人気”ってのは絶対ウソだし、そもそも、お客さんはあんまりいません。
選外より
近年、ナポリタンを横浜発祥として売り出す動きもありますね。
元祖商法をぶち上げた「ホテルニューグランド」のストーリーは、結局の所、トマトソーススパゲティの復刻記であり、我々の知るナポリタンの成り立ちとは異なるものだと考えます。
また、横浜に他所とは違うナポリタン文化が根付いているわけでも無いのです。
強いて挙げるとしたら、ニューグランドと同じルーツをもち、戦後、入手しやすいケチャップをハムピーマンなどと共に代用した「センターグリル」のナポリタンが、最もそれらしい一品であると言えましょう。お味もおいしいので、オススメです。
お隣の川崎市を発祥とするニュータンタンメンも、横浜に根付いているご当地メニューと言えます。
ひき肉と溶き卵とにんにくガッツリなピリ辛麺。
元は中華の担々麺をアレンジしたものといいますが、ほんのり朝鮮の息吹も感じますね。
これもオススメです!
コメント一覧
聘珍樓で「間違ってもサンマーメンなんかを注文しない方がいい」というのは非常に誤解を招く文章だと思います。なんの根拠もなく高級店を逆に差別しているように思います。
私はなんども聘珍樓に伺いますが頻度多くサンマーメンを注文します。
優しい味わいでもしっかりと旨味が感じられるスープはとても美味しいです。
あぁさすが聘珍樓といつも感激して食べます。
当然、サンマーメンを頼んだからといって、店員が怪訝な顔をするようなことは今まで一度もありません。
「サンマーメンなんかを注文しない方がいい」というのは何をもってそんなことを仰っているのでしょうか?
>たもつさん
聘珍樓のサンマーメンを好むご自分がバカにされたと感じたのですね。
近頃はどうだか知りませんが、かの聘珍樓ですから、サンマーメンもそりゃ美味しく作ってくれるのでしょう。ただ、それはご当地食であるところのサンマーメンの姿とは大きな乖離があるように感じるのです。ですから、横浜のサンマーメンを食べてみたいという方には、別のお店をおすすめします。
もちろん、どのお店で、何を頼み、何を好んでもご自由。
忘れないでいただきたいのは、これは私個人の感想でありオススメであるということで、それはおそらく、たもつさんの価値観と相容れないということです。
野毛の「ノ貫」は新顔ですが、今ではニュータンタンに並ぶ「横浜の名物」と言っていいような気が・・
>とくもりーさん
横浜らしくはないですが、横浜を代表するおいしいラーメン屋さんであるのは間違いないので、いつかラーメンピックアップ記事も良いですね。
そんなに卑下するなら引っ越せば?
>匿名さん
私がどう思おうと、あなたの中の横浜の価値はなんら減じないから、安心して眠ってくださいな。
バンメンを提供する店のメニューを見ると、ほとんどがカタカナです。
たまに漢字で書かれていることがありますが、それは拌麺ではなく何故か弁麺。
古い漢字で辦麺というのも見ます。
この文字の謎がいまだに分かりません。
すこし分かってきたのは、バンメンが進化して五目うま煮ソバになったらしいということ。
「バンメン」と注文すると「五目うま煮ソバ」で出てくる店があります。
>酔華さん
た、たすかに。
清風楼でも、迎賓楼でも、榮濵楼でも、バンメン=辯麺を当てていますね。
拌麺は単なる先入感だったのかも。でも、なんなんだ弁麺て。
さすがだ。さらなる研究が待たれます!
>中年の一人飯さん
ごめんなさい。コメントを移動しました。
ついに移転なのか!まぁ、仕方ないよな。でも、どこへ移っちゃうの?私が通える場所だといいのだけど・・・
>いつもHP楽しみに見てます。そう、遠出していて急に横浜橋らあめんせんだいで辛味噌キャベツトッピング毎度の食べようと原チャで駆けつけたらまさかの移転のお知らせが。。
職人さんに聞いたところ居抜きしているので7月7、8日くらい再開か、というところでしたよ。
>中年の一人飯さん
移転先を確認しました。
「精一杯」の後かなと思っていたので、意外な場所。
再開が楽しみです!
こんにちは。生まれも育ちも横浜なのに横浜市歌が歌えないミノブタです。
恰幅さんの横浜愛が溢れるコンテンツですね。
自分も横浜愛が強すぎて、最近は「どこから来たの?」って来たら神奈川って答えるタイプですw。中華街、食べ放題のコンテンツの冒頭でも横浜市民の気持ちを言い得てると深く頷いてしまいました。
ペリーが来なきゃタダの漁村。「苫屋の煙」ってどういう意味なんだろうと今まで気にしてなかったんで大変勉強になりました。
チャーメンと言えば、戸塚駅西口が再開発されるよりもずっとずっと前に駅前にあった中華料理屋に祖母に連れられて良く食べた思い出があります。近所の出前中華のメニューにもありましたし、タンメン同様に全国的なものだと思ってました。
久しぶりにチャーメン食べたくなりました。
>ミノブタさん
読んでくれてありがとう。
頑張って書いたけど、全くバズりませんでした。
昔ながらの町中華が減ってますから、バンメンどころか、チャーメン、タンメン、サンマーメンもどうなっていくかわかりませんね。
特にチャーメンは危険信号を感じます。食べておかねば。
久しぶりにこの記事を改めて拝見しましたが、よくまとまっていて良記事だと思います。
ムックにするには個別情報が多く無いけどブログで書くにはまとめにくい幅広いジャンルのお話しなので。
>ぴーさんさん
ありがとう。
頑張って書いても大して読まれないけどね。
ワタシも「バンメン」は「拌麺」(あえ麺) だと思っていたクチですが、
今は無き中村橋のゑびす屋でバンメンを頼んだ時、スープと餡掛け具材タップリの麺が
出てきてびっくりしたのを覚えています。
「辯麺」だったんですね。また興味深いテーマが。
あ、ゑびす屋のバンメンは味も量も素晴らしかったです。
あそこはなに頼んでも外れなかった。ねこも食卓の上で遊んでくれたしw
>ちゃーはんさん
辯麺ではなく辦麵が元なのかも。
本土でもとろみ和えそば的なものに使われているようです。