百万遍の交差点にある和菓子屋さん。
かつて、寺町二条にあったという「鎰屋」から分かれて、大正5年に創業。
京大のお向かいに立地する店舗はどーんとビルになっておりますが、店頭は薄暗くて「あれ、今日はお休みかな?」って思うくらいよ。
暖簾を模した軒先テントも、なんだか破れかぶれな感じがして、観光の目的地としては、必ずしも心沸かない体裁です。
旅の終わりに自家で楽しむとっておきとは別に、義理土産を用意しなければならない方も多いと思います。バラマキ用ならば、まずは配りやすい小分けパックであること、コスト、日持ち、ネームバリュー、んで、最後になって、お味が問われるような選定の流れでしょうか。
今どき阿闍梨餅や茶の菓ならまだマシな方で、自分で食べたこともない、どの県で作られているのかも分からん抹茶スイーツ箱を、ばかばかカゴに入れてる奴らも少なからず見かけますね。実にもったいねぇ!
お土産というのは、ある意味自意識の発露でもありますので、定番からあえて一歩外して、幾度目かの京都を堪能してきたんだぞという渋みをほんのり漂わせたい時。個人的なおすすめは「かぎや」の商品なのです。
本店では旦那さんが丁寧に対応してくれて、やはり誠実なお菓子屋さんなんだなってのが伝わってきます。でも、わざわざ百万遍まで足を運ばずとも、駅や大きなお土産どころで滑り込みの調達が可能。かさばらないし、敷居も高すぎないとこが丁度いいと思うのです。
看板商品は「鎰屋」伝来のときわ木。
薄く伸ばしたつぶあんを焼き上げたお菓子ですが、今回は季節の栗餡バージョンのこゆ栗が売ってましたよ。ほっこり素朴な栗のお味。小さなパックに3枚入りで取り回しも良いですね。
奥は益壽糖。
某井筒八つ橋が、歴史に消えたやんごとなき菓子を復刻さしてもらいました的なプロモーションで好評を博しておるようですが、「かぎや」でも扱いがあります。
くるみを散らした求肥のお菓子で、ふんわりニッキの香り。漢方成分を各種配合した薬菓というよりは、こういう形のお菓子であったんだろうなと思います。おいしいです。
かさねもちは、襲餅と書くようです。
益寿糖もそうですが、こちらのお店は求肥のお菓子も得意で、まるでお餅でできたマシュマロのよう。小豆粒が散らされた、ふんわりとろけるような求肥を、きなこ&黒糖でいただきます。もちろん、おいしいです。
これを食べると、やはり信玄は上洛できなかったんだなって思います。
「かぎや」のお菓子は、全般的に渋好みなのは否めません。そこが魅力でもあるのですが、いかにも爺っぽく、パッと見の華やかさには欠けるのです。
でも、実際に味わってみると、その先があるのよ。上質なところがこれ見よがしに出しゃばらない加減がさすがで、じんわりとおいしさが滲んで、菓子好きな人は、おっとなるはずです。
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