地下食品街に入る滋賀の和菓子屋さん。
栗の和菓子というと、クチナシ色のシロップ煮をボコボコと乗せときゃいい安易な時代もありましたが、近年では和栗の魅力も注目され、栗本来の風味や素朴な味わいを楽しむお菓子を目にする機会も増えてきましたね。
まず思い浮かぶのは、岐阜スタイルの茶巾絞り栗きんとん。秋になると条件反射的に買ってしまう定番ですが、甘み控えめな上、ちっこいので食べごたえに欠けるのと、実は鮮度が大事で、デパートあたりに積まれたものは風味飛んだり、パスパスになりがちな欠点があります。
一方「たねや」の栗こみちは大量流通品ですが、私はこれでも全然満足できますよ。
中身の栗餡はちゃんと蒸し栗の淡い風味が楽しめる塩梅だし、乾きやすい栗に薄く羊羹をまとわせることでお味を下支える他、しっとり日持ちをさせる工夫となっています。
お味も旨い。
栗月下は、もうちょい高級な栗羊羹です。
小さな棹がいい値段しやがるのですが、一口食べてみるとなるほどなと納得します。
これは羊羹というより、ほどほどの甘みを加えた蒸栗の塊なんだな。切り口からして、すでに蜜しっとりではなく、栗の粉っぽさを帯びているのが分かりますでしょうか。
本来、栗の風味は一般的な羊羹の甘みの中にどっぷり埋没してしまうので、あえて渋皮っぽくしてみたりするわけですが、このお菓子は逆に引き算をしながら作ったもの。日持ちと素材感を両立させる「たねや」らしさを感じます。
侮れんわ。
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