せっかく島根にやってきたので「足立美術館」に足を伸ばしました。
米国専門誌によるランキングで20年連続1位。ミシュランでも三つ星を輝かせるという噂の日本庭園を拝んでおかねばなりませんよね。
松江から、JRの古い列車で30分弱となる、安来駅が最寄り。
わりと近いような気がしますが、松江駅に停まる電車は半分くらいが特急でさ。
周辺観光に利用できる普通列車は概ね1時間に1本来るか来ないかという状況ですから、事前に時刻表をチェックしておかないと駅で途方に暮れることになりますよ。
美術館は駅からさらに車で20分ほど離れた場所に立地します。
なんと、無料シャトルバスが約30分おきに迎えに来てくれるのが、まず凄いところなのよ。
JRよか便が多いじゃんか!
きっと、ここに降りるお客さんのほとんどは足立美術館行きってことなんだろうね。
かつて尼子家の本拠であった月山富田城手前の田園地帯。
なんでこんな辺鄙な場所に美術館が建っているのか、ずっと不思議だったのだけど、周辺は「さぎの湯温泉」という、小さな温泉街だったみたいです。
今でも少数の温泉宿が営業する他、メインコンテンツである「足立美術館」を中心に、食事処やお土産処、どじょすくいの安来節演芸館なども集積した観光地になっておりました。
もっと小ぢんまりとした私設美術館だと思っていたから、広い駐車場に観光バスなどがズラリとならぶ光景を見てビックリしましたよ!
戦後、不動産等で財を成した足立全康氏が、故郷の村に錦を飾った形。
でも、そこらの成金の道楽や上っ面なメセナとは一線を画す、ご本人の並々ならぬ熱意と注力を感じさせる施設だったのです。
一般的にお庭ってもんは、限られたスペースの中に雄大な自然を見立てて造られます。
また、大名屋敷であれ、お寺であれ、そこで暮らす人々の生活の傍らで、共に生きながら、移ろう四季を見せるものでもあるわけです。
一方、こちらのお庭は管理が行き届きすぎて、怖いくらいなのよ。
この作り込まれた風景の中に人の居場所はありませんね。
お庭の中をそぞろ歩く事もできず、来訪者との間に明確な一線が引かれておるのです。
まさに生ける絵画を観せるという、このコンセプト。
体感の中でも特に視覚を重視したしたような造りは、従来の作庭とは趣を異にするもので、美術趣味から発想するとこういう風になるのかいなと嘆息します。
実際、見事な風景なのですよ。
ただ、日本一のお庭かというと、別ジャンルの頂点であるような気もするな。
美を追求して、余計な思想が入らない分、外国人受けしそうなのはよく分かります。
背後の山等を借景して、奥行ある風景を作っております。
この日は生憎の天気だったので、お庭見物に向かないのではと危惧しておりました。実際、見通しのきく晴天なら更に素晴らしいのでしょうけれど、よほどの嵐でもなければ、雨の日で手前しか見えなくてもガッカリはしない風景が出来あがっております。
野暮なネタバレをしちゃうと、美術館の裏はこんな風景だから、マヂで異世界を作り出したなって感じよ。
山肌削って姿の良い松を植林したり、人工の滝を落としたり、がんばっておりました。
島根の田舎に、庭で客が呼べるものなのか。
実際オープンしてしばらくはだいぶ苦労されたようですが、現在は一生のうち一度は拝んでおきたいスポットとして、恥ずかしげがないクオリティに感じますね。
さらに本丸の美術館ですよ。
これもね、名も無き地域の作家を集めました的な染みったれた内容ではありません。足立氏が心血を注いで収集したという、横山大観大先生を核とするコレクションが立派。
竹内栖鳳や川合玉堂など「オラ、何でも鑑定団で聞いたことあるべ!」という分かりやすい名画に、北大路魯山人館までも設置されて、観光施設としては盤石な内容だと思います。
いやぁほんとに、よくぞ造って、維持してきたよな。
唯一の構造的欠陥は、庭園正面のベストビューが、喫茶室になっており、高い茶をしばかなければ拝めない点。
しかも、行列してるし、4人がけソファ席なもんだから、さすがに1人で占拠するのも憚られてさ。
このように両サイドから観る風景も十分に美しいのだけど、余計な商売してるなぁという気はします。
もう一回来られる機会があるかは分かりませんが、貴重なものを観られたわ。
現場では誰がどんなふうに造り上げてきたんだろうね。裏話に興味が湧きました。
帰りに安来駅周辺も散歩してみましたが、目の前が鉄を積出す安来港なのか。
ご当地には古来のたたら製鉄の流れが受け継がれており、現在も旧日立金属などの鉄鋼や鋳造の工場が置かれているところにロマンを感じますね。
駅にはわりと充実したお土産コーナーがありますので、忘れずに覗きたいですよ。
ただでさえ少ない飲食店は、この日軒並みお休みになっており、何の成果もありませんでした~
コメント一覧
わたしも行きました。かれこれ30年前、親に連れられ、存在も知らず、大観は大嫌いで、よって好印象なし。いっぱんに自然に対する過度の介入は、今もムカツク。日本古来の伝統に反する。平安時代『作庭記』といふのもありましたが、実はここで、近代化された「美」を観客は観ているのでせう。入館料も腰抜けでしたのう。
>RTさん
庭も盆栽も、相当な人工物なので、程度の問題といえますが、それにしても振り切ってるなという印象でした。私は自然よか人の業を観るのが好きなので、値段以上の価値を感じましたよ。
調べてみたら入場料、お安いのですね。30年前と変わっていないのでは? でも、ガラス越しに鑑賞するお庭・・・図鑑のやう・・・
>RTさん
私の場合は往復のシャトルバス代も含まれているので格安です。
少し前に、「世界、ニッポンに行きたい応援団」でやってました~
8人くらいの庭師のみなさんが、毎日作業しているようです。
後ろの山の木々も、携帯電話で連絡を取りながら、切る木を揺らしながら探したり、
ほかの土地で育てた木と入れ替えたりしてましたよ。
私も去年行きましたが、好き嫌いが分かれると思いました。
>ayuさん
生きる絵画というお庭はすごいんだけど、若干戸惑うところもありますよね。