仙台といえば、牛タンです。
大手の「利久」なぞは宮城県内だけで30店以上を展開しておりますし、他にも繁華街に複数店舗を構える専門店が幾つもありますから、仙台の街はまさに牛タンまみれといった状況よ。
もちろん、それらを乏しき観光客だけで支えられるはずもなく、市民もまた日常的に食しているソウルフードであることは間違いありません。
だけどね、今回はあえて牛タン抜きで巡ってみようと、そう心に決めて来たんだよ!
仙台旅も終盤になってさ、乏しい成果を振り返りながら思っちゃったよね、やっぱ寂しいなと。
はっと気がつくと、目の前に「旨味太助」の暖簾が揺れておりました。
歓楽街国分町にあるお店は、小さな焼き鳥屋みたいな体裁で、炭焼きの煙に燻された味のある雰囲気よ。
たしか、牛タン定食の元祖たる佐野氏の「太助」を、長男が引き継いだのが「味太助」。こちらは娘婿の系統のお店だと聞いたことがあります。
昔から、どっちが旨いのか論争になる有名店ですが、いずれも商売の規模を拡大していく方針では無かったようで、その後に全国展開等を行い、牛タン店としての知名度を高めたのは後発のブランドなんだよな。
席も狭いし、次々お客さんが入ってくるから、決して落ち着いて食える雰囲気ではないのだけど、モクモクと煙が上がるカウンター内で、若い焼き手がささっと炙って、すぐに定食が出てくるので、回転は悪くありません。
塩味の牛タン焼き、麦飯、テールスープ、漬物。
牛タン定食という、この黄金の組み合わせを、よくぞ考えてくれたよね。
歴史的にも、素材的にも、ご当地で生まれる必然性は薄かった鬼っ子名物料理です。
他店ではタン元などを差別化して、より高単価なメニューを提供していたり、牛たん料理やサイドメニューを拡充しておりますが、こちらではただ枚数の違いだけの潔き内容です。
そもそも肉質をシビアに求めるものでもなく、独特な食感と炭焼き風味が魅力だもんな。
タンは程よき厚みがあって、基本の4枚でも十分な食べ応えがありますね。ブリッと柔らかく、強めの下味がついていて、とにかくご飯がすすむ牛タン焼き。麦入りご飯は少なめにしなきゃよかったな~
付け合わせは浅めに漬かった野沢菜。南蛮味噌は無し。
タンの脂を流してくれるテールスープは、すっきりとした仕上がりです。たっぷりのネギが浮き、底に沈んだ柔肉を掬うのも楽しみ。
昨今は、我々の身近な場所にも牛タン店は珍しくなくなったので、あえて仙台で食わにゃならんものでもないだろうという認識でしたが、やはり、食べたら食べたでうまいものです。
ちなみに仙台駅牛タン通りの一番人気は「たんや善右衛門」で、そこだけ連日朝から行列してたのが謎でした。
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