かつて、砂浜が残っていた頃の大森海岸は、都心からほど近いリゾート地として人気だったようです。
周辺には数十の料亭と数百の芸妓を抱える都内屈指の花街も形成され、大変の賑わったらしいね。
現在は静かなマンション街に変貌して、そんな残り香を探すのは難しくなっておりますが、大正13年創業というお座敷洋食のお店がぽつんと残っておりますよ。

つっても、現在の店舗は戦後に駅前から移転してきたもので、大きな建物も後から取ってつけたような歪な構造に見えますな。
ニ階には宴席用の大きなお座敷や個室もあるようですが、別途室料もかかるようで、もう繁くは利用されてなさそうな雰囲気です。
ふらり訪れる私なぞは、かつて運転手たちの待合だったという、玄関脇の気さくなフロアでのお食事となります。

店名を冠した盛り合わせランチは夜でも注文可能だって。
ミニカップででてくる、じゃがいものポタージュが嬉しいな。
お料理は古びた味を愚直に守るだけではなく、どこかのタイミングでブラッシュアップされたっぽいな。
品書き自体はごく定番に絞られつつ、岩中豚や大山鶏など、素材を押し出す感じが現代風だし、まめに仕入れてそうな海鮮メニューからも、おいしそうな気配が漂うのです。

エビフライ、クリームコロッケ、ロールキャベツにペラリ敷かれたハムが渋いぜ。
天使の海老を使ったエビフライは、頭から尾っぽまで食べられますよってことで、サクサクと軽やかな食感に揚がっております。詰まった身も品良き甘みで、とってもおいしいじゃん!
まろやかなクリームコロッケも良いお味。
そして、ミニハンバーグではなく、ロールキャベツが添えられるのが面白い。たしかに一々焼くよりは合理的な運用かもしれませんし、これも旨いわ。
城南の洋食は、労働大衆向けのガッとしたものが多い印象だけど、こちらのお料理はちょっと良いホテルでいただくような折り目正しき仕上がりです。
それでいて、お値段も都心よかずっとお手頃なのが嬉しいよな。
また寄ろう!


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